ツキノワグマの基本的な生態を紹介します。
日本にはツキノワグマとヒグマの2種類のクマが生息しています。奥日光に生息するツキノワグマは、本州や四国(九州では絶滅したとされる)に分布しています。
※ヒグマは国内では北海道にのみ生息しています。
植物を中心とした雑食性で、春はブナの新芽やササ、夏は草の葉や実、シロアリやハチの巣、秋はミズナラ、ブナ、クリなどの実を食べます。その他、魚類、死んだシカやノウサギを食べることもあります。
【身体的特徴】
・運動能力…木登り・水泳が得意で、人より速い走力を持ちます。
・身体…全身黒色で胴に白い三日月模様があり(まれにない個体もいます)鋭い爪や牙をもちます。成獣は頭胴体110~130cm、体重40~130kgです。
なわばりより、その季節のエサが豊富な場所に集まります。エサが不足する場合は行動範囲を拡げます。ツキノワグマは40~70km²の行動範囲を持ちます。
【活発な活動時間帯】
・早朝と夕方が最も活発に活動しますが、春や秋は昼も活動します。また、雨や霧など薄暗い日中も活動します。
秋になるとドングリなどを食べて脂肪をたくわえ、樹洞などで12月から4月頃まで冬眠します。クマ類の冬眠はあまり体温を下げないため、外からの刺激で起き出すことがあり「冬ごもり」とも呼ばれます。
非常に大きいフン、木を登り降りした際の爪痕、樹皮をはいだ跡(クマ剥ぎ)、樹上で実を食べるために折った枝が集まったもの(クマ棚)など、生息地には様々な痕跡が残されます。
人の存在を知らせる、クマに近寄らないようにすることが重要です。
事前に『クマの目撃情報』を確認し、頻出箇所にはできるだけ近寄らないようにしましょう。
クマ鈴(※)で人の存在を知らせることで、不意の遭遇を避けることが最も重要です。クマ鈴を付けていても遭遇することはありますが、鈴の音によってクマが人の存在を感じていれば、危険性を低くすることにつながります。
逆に、突発的な出会いが一番危険なので、見通しが悪い所やクマがいそうな所では、走らない、音を出すなど、特に注意して行動しましょう。
ただし、人の多いところなど不必要な場所では音を出さないような配慮をお願いします。
※遠くまで響く高い音が効果的で、ラジオなどは不向きです。
早朝や夕方は、クマの行動が最も活発になるので、特に注意が必要です。また、雨や霧など薄暗い時も同様です。なお、近年は時間帯や天候に関係なく、日中に目撃されることも多いので、十分ご注意ください。
残飯や空き缶などのゴミを自然に放置すると、人の行動範囲にクマを強く誘引します。絶対にゴミを捨てたり埋めたりしないでください。
危険を感じているのはクマも同じです。刺激しないように落ち着いて行動しましょう。
クマとの距離が遠い場合は、走ったり騒いだりせず、静かにその場を離れてください。近い場合は、背を向けずに、ゆっくり後退してください。すぐ近くの場合は、じっとしてクマが立ち去るのを待ってから、その場を離れてください。
人と遭遇した時はクマも興奮しています。ライトで照らす、写真を撮る、走る(急に動く)などの行為は、距離に関わらず大変危険です。
仔グマの仕草は可愛らしいですが、必ず近くに母グマがいます。母グマは仔を守るために特に攻撃的で大変危険なので、絶対に近寄らないようにしてください。
ツキノワグマの走る速さは時速40~50kmと言われ、木登りや泳ぎも得意なので、逃げずに身を守ることが第一です。体を丸めて伏せて両腕で首や頭を守る、大きな岩や倒木に身を隠すなどして、クマが去るのをじっと待ってください。